繰り上げ・繰り下げどちらがお得?(繰り上げ編)
国民年金や厚生年金は、支給開始年齢が原則65歳となっています。原則ですから例外もあります。
それが繰り上げ又は繰り下げという制度です。
繰り上げというのは原則支給開始年齢より早く貰うことを意味し、逆に繰り下げは遅く貰うことです。
繰り上げ繰り下げ双方とも年齢上限下限がありますし、それぞれメリット・デメリットもあります。
受け取る額も受給開始時期に応じて変わってきますし、状況によっては遺族年金などにも影響を及ぼします。
家庭の経済状況により、受給開始年齢を早くした方が助かるところもあれば、遅めにして1円でも多く受け取りたい家庭もあるでしょう。
繰上げ・繰下げを決める前に、制度をよく理解しておきましょう。
ここでは、今回は繰上げ制度について見てきたいと思います。
繰り上げ可能な年齢とは
繰り上げの場合で最も早く貰える年齢は60歳です。
原則支給開始年齢は65歳ですから、繰り上げは60歳から原則支給開始前の64歳までの間であれば何歳からでも貰うことは可能です。
何歳から貰いたいのかは、ご自身で選択できますが、自ら請求しないと貰うことはできません。
繰り上げしたい月の前月までに請求すれば、翌月分から支給されます。が、ここで注意していただきたいのが、実際に支給される月は偶数月で、その偶数月に貰える年金は前々月と前月の2か月分になります。
例えば6月支給分でしたら、4月・5月分がまとめて6月に支給されるということです。
ですので、4月分から貰いたい場合は、3月に請求しないとなりません。
しかし、4月分が実際に受給するのは6月ですから、繰り上げ請求をした月から3ヶ月後に繰り上げ年金支給がスタートする。という考え方になります。
他の例として、5月に請求した場合は6月分から受給開始となり、6月分が貰えるのは次の偶数月の8月からということになります。
請求する場合は、請求書と身分を証明する書類等が必要となりますが、詳しいことは最寄りの年金事務所、年金相談センター、市区町村役場のいずれにお問い合わせ下さい。
支給繰り上げ請求書
繰上げ請求書の書類は以下の書式となります。
※出典:日本年金機構
受給額
繰り上げは早くから貰えるのがメリットのように思える反面、ひと月早く貰うごとに0.4%ずつ減額になるというデメリットもあります。
どういうことかと申しますと、ひと月早くもらうごとに65歳から貰える予定であった年金額の0.4%が減っていくのです。
計算式は、年金支給額ー(年金支給額×減額率) となります。
減額率については、下の早見表をご覧ください。
例えば国民年金保険料をコツコツ40年間払い続けた昭和36年7月生まれのAさんが、62歳になる令和5年7月に繰り上げ支給の請求をしたとしましょう。
令和5年度の満額の国民年金支給額795,000円です。請求時の年齢は62歳の誕生月ですから下の早見表から見てみると
795,000ー(795,000×14.4%)=680,520円 となります。
ちなみに昭和37年4月1日以前の方は、減額率が0.5%となり、上記の例として、Aさんが昭和37年3月生まれで、その月に繰り上げの請求を行ったとすると
795,000ー(795,000×18.0%)=651,900 になります。
下の表は、昭和37年4月2日以降に生まれた方が繰上げ支給した場合の減額率です。
出典:日本年金機構
繰り上げによるメリット・デメリット
次に繰上げによるメリット・デメリットについて見てみます。
メリット
・早期から安定した収入が得られる
・病気やケガ等で働くことが厳しい場合は、年金が収入源となりえる
デメリット
・早期に受給すればするほど減額率が高くなり受給額が減る
・1度受給すると生涯に渡って減額された年金額での受給となる
・老齢厚生年金と同時に受給するようになり、厚生年金も同様に減額された年金額となる
・寡婦年金が受け取れなくなる
・任意加入ができなくなる
・付加年金を納めていた場合、国民年金と同額の減額率で受給する
まとめ
いかがでしょうか。繰り上げの場合、メリットよりデメリットの方が多いようです。
繰り上げは早く貰える代わりに縛りが多く、しかも額が減らされた状態で一生涯続くのです。
収入に不安がある方は繰り上げは有効手段の1つですが、そうでない方は熟慮することをお勧めしたいと思います。
繰上げすると、その額が生涯続いて行くのです。65歳から受給すればよかった、なんて後悔しないように、繰上げ制度をよく理解して決断されることを願っております。