遺族厚生年金

厚生年金の被保険者だった者が死亡し、一定の要件を満たすと、遺族に対し年金が支給されます。それが遺族厚生年金です。

遺族厚生年金は、死亡時に厚生年金の被保険者だった、又は過去に被保険者であった者で、その当時の親族に支給されるものです。

「その当時」ですので、離婚していた元配偶者であっても支給されません。(子には支給される場合があります。)

死亡した被保険者のみならず、その遺族も一定の要件に当てはまらないと受給できません。
まずは、死亡者の要件から見ていきたいと思います。

死亡者の要件

亡くなった時点の状況

遺族厚生年金を受給するには、被保険者であったときに亡くなったのか、それとも、過去被保険者であった者で、期間は何年あったのかなどの要件があります。次のいずれかに該当することが必要です。

  • 被保険者が死亡したとき
  • 被保険者であった者が、被保険者資格喪失後に、被保険者時代に初診日がある傷病が原因で、その初診日から5年以内に死亡したとき
  • 障害等級1級又は2級の障害厚生年金受給者が死亡したとき
  • 25年以上の被保険者期間がある老齢厚生年金受給者又は被保険者であった者

保険料納付要件

被保険者であったときに死亡した場合は、その時点での納付要件を満たしている必要があります。保険料納付要件とは、保険料を納めていた期間の長さを指します。

期間の長さとは、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があるときは、その被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が、その被保険者期間の3分の2以上であることが必要です。

分かりやすく説明しますと、被保険者が令和5年8月3日に死亡したと仮定します。死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月、令和5年の6月までの期間から遡って国民年金の被保険者期間が全体の3分の2以上あればよいわけです。

よって、国民年金に加入したのが平成30年1月であれば、保険料を納めていない月が通算22か月以下なら受給できます。

ちなみに、経過措置として令和8年4月1日前までの死亡については、死亡日の属する月の前々月から遡って1年間未納期間がなければ受給可能です。(65歳以上は除く)

遺族の範囲及び順位

遺族の範囲

遺族の範囲は、被保険者又は被保険者であった者の配偶者、子、孫、祖父母です。死亡当時胎児であった場合でも、出生したと同時に受給する権利が発生します。

遺族の順位

遺族厚生年金の受給者は優先順位があります。被保険者の兄弟姉妹は遺族の範囲には含みません。
遺族厚生年金を受給できるのは以下の順です。

1 被保険者又は被保険者であった者の配偶者及び子
2 被保険者又は被保険者であった者の父母
3 被保険者又は被保険者であった者の孫
4 被保険者又は被保険者であった者の祖父母

年金額

基本年金額

死亡した被保険者の厚生年金加入期間が300月未満の場合は、300月として報酬比例部分の額と掛け算されます。
掛け算された額の4分の3が遺族厚生年金の基本年金額となります。

報酬比例部分とは、年金額を計算するときの基礎となるもので、加入期間や報酬(給料)によって変わります。

配偶者が65歳以上で老齢厚生年金を受給している場合

配偶者が65歳以上で、老齢厚生年金を受給している場合は、年金基本額か、次で示す2つの項目を足した額か、どちらか多い額となります。

1 年金基本額の3分の2
2 遺族厚生年金を受給する65歳以上の配偶者自身の老齢厚生年金の額の2分の1

支給停止

遺族厚生年金を受給するには、要件を満たさなければなりませんが、その要件が満たされなくなると支給停止となります。以下は、支給停止となる要件です。

遺族補償による支給停止

労働基準法の規定による遺族補償の支給が受けられる場合は、死亡日から6年間、遺族厚生年金は支給停止となります。

子に対する支給停止

配偶者と子は遺族厚生年金の受給順位は同列ですが、実際は配偶者と子が同じ条件であれば、配偶者を対象として支給されます。子に対する支給停止とあるのは、配偶者は受給できないが子は受給できるパターンがあるからです。

そのパターンは以下のとおりです。
・夫が60歳に達していないため、夫の遺族厚生年金が支給停止されている場合
・配偶者が1年以上所在不明のため、配偶者の遺族厚生年金が支給停止されている場合
・子のみが遺族基礎年金の受給権があり、配偶者の遺族厚生年金の支給が停止されている場合

夫、父母又は祖父母に対する支給停止

遺族厚生年金は、妻以外は60歳に達しないと受給できません。ただし、夫が遺族基礎年金が受給できる場合は、あわせて遺族厚生年金も受給できます。

遺族基礎年金は、夫婦のどちらかが死亡したとき、残された子が18歳未満(障害等級1級、2級の子は20歳未満)であったときに、配偶者に支給されるものです。

所在不明による支給停止

1年以上所在が明らかでない場合に、他の者の申請によって、所在不明となった日までにさかのぼって支給が停止されます。

失権

失権とは文字通り受給する権利を失うことです。配偶者や子など、遺族厚生年金を受給する権利がある者が、以下の要件に該当したとき失権します。

・受給配偶者が婚姻したとき。(事実婚または婚姻していなくても夫婦同然の生活をしていたとき)
・死亡したとき
・直系血族及び直系姻族以外の者の養子となったとき
・離縁によって、死亡した被保険者であった者と親族関係が終了したとき

最後に

遺族基礎年金と遺族厚生年金が大きく違う点は、子の有無です。厚生年金の被保険者が死亡した場合は、子がいる配偶者には、遺族厚生年金と遺族基礎年金両方が支給されます。

しかし、子がいなくても、40歳以上で被保険者期間が240か月以上など条件を満たせば、中高齢寡婦加算が支給されます。受給額は約58万円です。(妻のみ)

障害年金同様、遺族年金も縁がないほうがよいとは思いますが、ご自身あるいは配偶者の万が一に備える意味でも、この制度があることを念頭に置いても損はないでしょう。

※参考:厚生労働省HP