死亡一時金と寡婦年金
国民年金の被保険者が死亡したとき、一定の要件を満たすと遺族基礎年金が支給されますが、それ以外にも死亡一時金と寡婦年金が支給される場合があります。
死亡一時金と寡婦年金は、遺族基礎年金の受給する資格がない遺族に支給されるもので、しかも、どちらか一方の選択になります。
死亡一時金の遺族の範囲は、配偶者、子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹にいずれかに支給されるのに対し、寡婦年金は文字どおり妻に支給されます。
受給方法も、死亡一時金は1度だけの受給で額も保険料納付済月数により決まりますが、寡婦年金は死亡した被保険者が支給できたであろう基礎年金額の4分の3を受給します。
このように、死亡一時金と寡婦年金には受給額や受給の仕方には違いがあり、要件も異なります。
ここでは、死亡一時金と寡婦年金について見ていきたいと思います。
死亡一時金
死亡者の要件
死亡一時金は、国民年金の被保険者が死亡したとき、その日が属する前々月の時点で保険料納付期間が36か月分あれば受給できます。
年単位ではなく、月ごとの計算になるのは、4分の1免除や4分の3免除といった部分的に保険料免除している被保険者がいるため、と推測します。
例として、4分の1免除期間であれば残りの4分の3は保険料を納めているわけです。この4分の3に該当する月数が12か月あれば丸々9か月分納めた計算になります。そうやって積み上げた結果の合算が36月分になればよい。という制度です。
4分の1免除や2分の1免除も同じように計算することで、亡くなった時点で合計36か月分であれば該当します。(下図参照)
受給額
死亡一時金は、保険料納付月数により受給額が変わります。一覧が以下の表です。
※参考 厚生労働省「(参考)死亡一時金の概要」
受給者の範囲
受給者の範囲は、配偶者、子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹のいずれかですが、優先順番は配偶者、子と続きます。いずれにしても、被保険者が亡くなった当時、生計を同じにしていたのが条件です。
寡婦年金
老齢基礎年金の受給資格がある被保険者が亡くなった場合で、遺族基礎年金の受給資格がない妻に対して寡婦年金が支給されます。
死亡した夫、受給する妻、それぞれに要件があります。
受給条件
死亡した夫の要件
・死亡者の被保険者期間が10年以上(保険料納付済期間+免除期間)
・死亡した被保険者が障害基礎年金又は老齢基礎年金の支給を受けたことがない
妻の要件
・夫によって生計を維持していた
・夫との婚姻関係を10年以上継続していた(事実婚含む)
・65歳未満であること
・繰上げ支給の老齢基礎年金を受給していないこと
支給期間
支給期間は60歳~65歳の間で、最大5年間支給されます。
・夫の死亡当時妻が60歳未満の場合
妻が60歳になった月の翌月から、65歳になった月の翌月まで支給されます。
・夫の死亡当時65歳未満だった場合
夫が死亡した月の翌月から、65歳になった月の翌月まで支給されます。
支給額
支給額は、死亡した夫の当時の老齢基礎年金受給可能額の4分の3です。具体例としまして、令和X年度の国民年金受給額が満額780,000円とします。
死亡した被保険者の被保険者期間が10年とします。
146,250円が寡婦年金額となります。
支給停止
労働基準法の規定により、遺族補償が受けられる場合は、6年間寡婦年金の支給停止となります。
失権
・65歳に達したとき
・死亡したとき
・婚姻をしたとき
・直系血族又は直系姻族以外の者の養子となったとき
・繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権を取得したとき
最後に
遺族基礎年金は受給できないが、死亡した被保険者が10年以上被保険者期間がある場合は、寡婦年金と死亡一時金どちらかを選択することになります。
受給額は、夫の死亡時の妻の年齢にもよりますが、どちらか多く受給できるかを見極めて決定しましょう。