遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者(主に個人事業主、無職、フリーランス)が亡くなったときに、残された配偶者や子らに対して支給されるものです。
遺族基礎年金は、遺族厚生年金と違い「子」がいないと支給されません。しかも、被保険者がなくなった時点で18歳以下であることが前提です。(子が障害等級1級又は2級である場合は20歳未満)
ここでは、遺族基礎年金について見ていきたいと思います。
死亡者の要件
亡くなった時点の状況
遺族基礎年金を受給するには、被保険者だったときに亡くなったのか、被保険者であった者で、被保険者期間が25年以上かなどの要件があります。次のいずれかに該当することが必要です。
- 被保険者が死亡したとき
- 25年以上の被保険者期間がある老齢厚生年金受給者又は被保険者であった者が死亡したとき
- 被保険者であった者で、日本国内に住む60歳以上65歳未満の者が死亡したとき
60歳未満で全期間の3分の2以上国民年金を納めていた、又は60歳以上65歳未満の無職の方でも、過去25年以上年金を納めていれば、その親族は、遺族基礎年金が受給できる資格があると言えます。
保険料納付要件
被保険者であったときに死亡した場合は、その時点での納付要件を満たしている必要があります。保険料納付要件とは、保険料を納めていた期間の長さを指します。
期間の長さとは、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があるときは、その被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が、その被保険者期間の3分の2以上であることが必要です。
分かりやすく説明しますと、被保険者が令和5年8月3日に死亡したと仮定します。死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月、令和5年の6月までの期間から遡って国民年金の被保険者期間が全体の3分の2以上あればよいわけです。
よって、国民年金に加入したのが平成30年1月であれば、保険料を納めていない月が通算22か月以下なら受給できます。
この「3分の2」の要件は、60歳~65歳未満の方で、国民年金保険料を納めている場合でも適用されます。60歳以降年金保険料を納めている方は、20歳~60歳までの間に未納の期間があった方です。
その方は、3分の2に届かずとも、経過措置までに亡くなった場合は、遺族基礎年金が親族に支給されます。
経過措置とは、令和8年4月1日前までの死亡については、死亡日の属する月の前々月から遡って1年間未納期間がなければ受給可能です。(65歳以上は除く)
遺族の範囲及び順位
遺族の範囲
遺族の範囲は、被保険者又は被保険者であった者の配偶者、子です。遺族厚生年金のような孫、祖父母は該当しません。しかし、死亡当時胎児であった場合は、出生したと同時に受給する権利が発生します。
遺族の順位
遺族厚生年金の受給者は優先順位がありましたが、遺族基礎年金には優先順位はなく、配偶者と子は同時に受給します。
年金額
年金額は以下のとおりです。
・配偶者約780,000円
・子(2人目まで1人につき)224700円
・子(3人目以降1人につき)74,900円
配偶者がいない場合、即ち、子だけが残された遺族の場合は、長子に約780,000円、次子に224,700円がそれぞれ支給されます。(3番目の子は74,900円)
年金額の改定
増額改定
被保険者が亡くなったとき、胎児であった子が出生した翌月から受給できます。ですので、胎児だった子が第2子であれば、単純に増額となりますが、被保険者が亡くなった時点で出産を控えた妻だけが遺族の場合、子の出生と同時に妻も遺族基礎年金を受給する権利が発生することになります。
減額改定
遺族基礎年金は、子がいる配偶者に支給されるものであるため、子に対する以下の要件がどれか一つ該当する場合に減額されます。
・子が死亡したとき
・子が婚姻したとき(事実婚含む)
・配偶者以外の者の養子となったとき
・配偶者と生活を同じにしなくなったとき
・18歳になってから最初の3月31日が過ぎたとき(支給期間は18歳に達した年度末まで)
・障害等級1級又は2級であった子が、その等級に該当しなくなるか、20歳に達したときのいずれか
なお、子が上記いずれかの事項に該当し、配偶者に子がいない状態になった時点で、遺族基礎年金の支給はなくなります。(遺族厚生年金は年齢によります)
また、遺族基礎年金の受給途中で、何らかの事情で配偶者がいなくなっても、子に対する支給は継続します。
支給停止
遺族補償による支給停止
労働基準法の規定による遺族補償の支給が受けられる場合は、死亡日から6年間、遺族厚生年金は支給停止となります。
所在不明に対する支給停止
配偶者、子ともに1年以上所在不明であった場合は、所在不明となった日にさかのぼって遺族基礎年金が支給停止となります。
失権
失権とは、遺族基礎年金の受給する権利を失う意味ですが、失権理由は、先述した減額理由とさほど変わりませんので、割愛します。
最後に
厚生年金の被保険者が亡くなった場合は、子が失権して遺族基礎年金が受給できなくなっても、その後金額は少なくなりますが、中高齢寡婦加算が支給されるケースがあります。(年齢によります。)
制度が多少複雑ではありますが、お金に関する事項は、損をしないように気を付けたいものです。
遺族年金に関する詳細は、日本年金機構のホームページをご覧ください。
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