国民年金保険料の免除について

保険料の免除とは

国民年金は、老後に生活資金の一部として受け取れる公的年金ですが、現役世代においては保険料を納める立場です。保険料を納めないことには老後に受け取れる年金も雀の涙ほどになりかねません。

しかし一方で、何らかの事情で納めたくても納められない方も少なからずいらっしゃいます。そういう方を救済する趣旨の制度が保険料免除です。厚生労働省が定めた要件に当てはまる場合は免除または猶予となります。

ただし、社員として働いている会社員、或いは派遣会社等で厚生年金を給料から引かれている場合は、国民年金も同時に天引きされているので免除できません。

また、個人事業主やフリーターといえども、一定の収入がある方も免除不可です。そういう意味からすると国民年金の保険料納付免除対象者は、低所得者に限られると思われるでしょう。

しかし、免除者は、低所得者だけでなく、例えば会社員でも出産を控えている方は、出産前後の一定の期間免除となる上に、その免除期間は払済みとして計算されます。

ほかに、学生である期間や50歳未満で低所得の場合は免除ではなく猶予という形で納付を先送りする制度もあります。
ここから、保険料納付制度について詳しく見ていきたいと思います。

保険料免除の種類

まず、保険料の免除の種類について見てみます。

1 法定免除
2 申請免除(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)
3 学生納付特例
4 納付猶予
5 産前産後期間※(試験対策を考慮するなら、正式には免除の種類には入りません。)

となります。では、上から順番に一つ一つ見ていきましょう。

各種免除要件

法定免除

法定免除とは、決められた要件を満たし、その要件に満たした事実を申請すれば納付免除が認められる制度です。
要件とは次の3つに該当する場合です。

1 障害年金受給者(2級以上)
2 生活保護受給者
3 厚生労働省が定める施設入所者

申請免除

申請免除は、年収が要件を満たしたときに、申請し承認されることで免除になる制度です。こちらは、法定免除と違い審査があるので申請すれば必ずしも免除されるとは限りません。

1 全額免除

(1) 前年の所得が基準額を下回る場合 
  (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円の金額以下
(2) 家族が生活保護以外の扶助を受けるとき(生活保護には住宅扶助、教育扶助など計8種類あります。)
(3) 自然災害ほか、厚生労働省が定める理由により、保険料を納めることが困難な場合

2 4分の3免除

(1) 前年の所得が基準額を下回る場合
   88万円+(扶養親族数×38万円)の金額以下
(2) 家族が生活保護以外の扶助を受けるとき(生活保護には住宅扶助、教育扶助など計8種類あります。)
(3) 自然災害ほか、厚生労働省が定める理由により、保険料を納めることが困難な場合

3 半額免除

(1) 前年の所得が基準額を下回る場合
   128万円+(扶養親族数×38万円)の金額以下
(2) 家族が生活保護以外の扶助を受けるとき(生活保護には住宅扶助、教育扶助など計8種類あります。)
(3) 自然災害ほか、厚生労働省が定める理由により、保険料を納めることが困難な場合

4 4分の1免除

(1) 前年の所得が基準額を下回る場合
  168万円+(扶養親族数×38万円)の金額以下
(2) 家族が生活保護以外の扶助を受けるとき(生活保護には住宅扶助、教育扶助など計8種類あります。)
(3) 自然災害ほか、厚生労働省が定める理由により、保険料を納めることが困難な場合

学生納付特例

学生納付特例とは、学生等であって、以下の要件に該当する場合、保険料の全額が猶予される制度です。
学生等とは、大学、高校、中学、定時制、通信課程の学生等です。

(1) 前年の所得が基準額を下回る場合
   128万円+(扶養親族数×38万円)の金額以下
(2) 家族が生活保護以外の扶助を受けるとき(生活保護には住宅扶助、教育扶助など計8種類あります。)
(3) 自然災害ほか、厚生労働省が定める理由により、保険料を納めることが困難な場合
   128万円+(扶養親族数×38万円)の金額以下

納付猶予

50歳未満の被保険者、及び配偶者にいずれもが以下の要件に該当する場合で、申請すれば保険料の全額が猶予される制度です。対象年齢は50歳未満です。令和12年6月までの時限措置となっています。

(1) 前年の所得が基準額を下回る場合 
 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円の金額以下
(2) 家族が生活保護以外の扶助を受けるとき(生活保護には住宅扶助、教育扶助など計8種類あります。)
(3) 自然災害ほか、厚生労働省が定める理由により、保険料を納めることが困難な場合

産前産後期間

出産を控えている被保険者が産前産後休暇を取った場合、その間給料は出ません。その代わり健康保険から出産手当金として給料の67%が支給されます。収入が減る上に社会保険料まで納付するとなると負担が重くなります。

それを防ぐために出産予定日の1か月前から出産した月の翌々月まで保険料納付を免除する制度があります。実際には免除、つまり納める必要はなく、年金額を計算するときも、この期間は払ったものとして計算します。そういう理由から産前産後期間は制度上の保険料免除の対象にはなりません。

免除した期間の受給額

免除した期間の年金ってどういう扱いになるのか。どのくらい減るのか気になるところですね。免除した割合に応じて将来受け取れる年金額は変わってきます。

国民年金を勉強されている方はご存じかと思いますが、保険料一月分の半分は国が負担しています。残りの半分は私たち国民が納めるわけですが、保険料免除額が「4分の3」や「4分の1」といったように4等分されていることから、一月分の保険料を8等分して考えます。

つまり、年金一月分の保険料は、8等分の半分の8分の4は国が負担し、残りの8分の4は国民が納める形と考えるわけです。

例えば全額免除の場合は、「一月分の半分は国が出すけど、残りの半分は免除してあげるよ。」ということです。
これを8等分した数字で表すと、「8分の4」となり、本来なら一月分の年金をもえらえるところ、全額免除だとそれが半分になるということです。

同じように考えると、「4分の3免除」は、「8分の4は国が出すけど、残りの8分の4は本来ならあなたが出さなければならない。けど、所得が少ないなど払えない事情があるので8分の3は出さなくて良いよ。」となります。

その場合は、8分の8-8分の3=8分の5 が一月分の年金額になります。

国民年金額の計算方法は、480÷納付月数×満額 ですが、保険料免除を含めたケースだと、計算方法がややこしくなるので、ここでは割愛します。

まとめ

保険料免除等の制度ついて一通り見てきました。仮に失業した場合、収入が途絶えたからと言ってすぐには納付免除とは行きませんが、要件が整えば申請することにより保険料を納付しなくて済みます。

また、保険料納付免除制度は、収入により免除額が違う上に自ら申請しないと適用されません。万が一の事態に備えて、こういった制度があるということを頭の片隅にでも入れておいても損はないでしょう。

保険料免除制度についての詳細は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html