火災保険ではお隣さんの補償はできません!
生命保険同様、火災保険にも様々な特約があります。特約を付ける付けないで保険料に差は出ますが、不測の事態に備える保険ですので、内容を知るだけでも損はありません。
自然災害等で大きな被害が出たとしても、特約を付けていたことで補償される一方、補償されると思い込んでいたものが、特約であったために損してしまうケースもあります。
特約の種類や内容を知っておくのと知らないのとでは、損害が被ったときの補償額に大きな差が出ますし、精神的負担が違ってきます。知らなかったために後に大きな後悔をすることがないよう、ここで確認しておくことが大切だと思います。
特約の種類
火災保険の特約には、保険会社によって様々な商品があります。ここではあくまで一例ですが、どのようなものがあるか見て行きたいと思います。
費用保険金
火災や水害などで被害を受けた場合は、残存物の片づけや一時的な仮住まいの費用など、様々な付随費用が発生する。費用保険金は、損害保険金とは別に、これらの付随費用を補うために支払われるものです。
臨時費用保険金
ホテルの宿泊費、仮住まいの費用など使途は限定されません。(損害保険金の10%~30%)
地震火災費用保険金
地震・火災・津波等に起因する火災により、建物は半焼以上、家財は家財を収容している建物が半焼以上、または家財が全焼の被害を受けたときに補償されます。(損害保険金の5%)
残存物取り片付け費用保険金
被害を受けた建物や家財の残存物を取り除いて、片付けに必要な費用を補償します。(保険金額の10%)
失火見舞費用保険金
火災保険契約者本人またはその家族が起こした火事におり、隣家等に被害を与えたとき、相手に見舞金を補償するものです。(1世帯あたり20~30万円、全体で損害保険金の20~30%)
損害防止費用保険金
損害の発生・拡大を防止するために生じた費用を補償します。(認められた実費)
類焼損害補償特約と失火見舞費用保険金
契約者宅から出火した火災が隣の家にも燃え移ってしまったという場合、基本的には自宅にかけている火災保険では隣家の損害の補償をすることはできません。失火責任法により故意や重大な過失でなければ損害賠償責任は発生せず、賠償しなくてもよいということになっています。
しかし、隣の家との関係を考えると何らかの賠償はしておきたいという気持ちもあると思います。そのような場合に役に立つのが、類焼損害補償特約や失火見舞費用保険金です。
類焼損害補償特約と失火見舞費用保険金とはどのような補償なのか説明します。字面だけ見ると両方とも似たようなイメージの補償ですが、中身は異なりますので違いを確認してみましょう。
類焼損害補償特約
類焼損害補償特約とは、契約している家からの火災、破裂・爆発で近隣の家屋などに延焼してしまった場合に、法律上の損害賠償責任がなくても延焼先の損害を補償する特約です。ただし、延焼先の家が火災保険に加入している場合はそちらからの支払いが優先されます。
つまりは、延焼先が火災保険に入っていなかったり、入っていてもその火災保険だけでは損害をカバーしきれなかったりした場合に保険金が延焼先に支払われる特約です。一般的に保険金の支払限度額は保険期間を通じて1億円です。
失火見舞費用保険金
失火見舞費用保険金では、契約している家からの火災、破裂・爆発で近隣の家屋などに延焼してしまった場合に、支出した見舞金等の費用が保険金として支払われます。1世帯当たり30万円、1回の事故につき保険金額の30%や1世帯当たり20万円、1回の事故につき保険金額の20%といった金額が限度となります。
つまりは、延焼先に支払うお見舞金のための費用が保険金として支払われる補償です。
まとめ
ほんの一例ですが、どのような特約があるのかを見てきました。保険会社によって実に様々な特約がありますので、一度サラッと各社の保険内容を見ておくのも良いかも知れません。
また、自分が失火者となり、隣家に延焼してしまった場合、法律上の損害賠償責任がないとはいってもご近所との関係性を考えるといくらか金品を渡しておきたいという気持ちも芽生えます。そのような場合に役に立つのが火災保険の「類焼損害補償特約」や「失火見舞費用保険金」です。
保険は万が一に備える保険です。特に火災は、自分の家のみならず、他人の住処を奪ってしまうことにもなりかねません。少額の補償ではとても賄いきれない状況に陥る可能性もゼロではないのです。
「備えあれば憂いなし」です。もう一度特約について考えてみてはいかがでしょうか。